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第17話  

「どんな特殊な状況ですか」

 篠田初は医師を困惑した表情で見つめた。

 「あなたが妊娠しているのは、HCG値から見ると双胎の可能性が高いです。しかも、その双胎はおそらく男の子と女の子、つまり男女の双子である可能性が非常に高いんです」

 医師は大きくため息をつき、惜しむような口調で言った。「わかりますか。遺伝もない自然妊娠で、双子が生まれる確率は0.5%です。そして男女の双子が生まれる確率は0.01%です。つまり、あなたの子供たちは非常に稀な確率で、この世界にやってきたんです。あなたは本当に彼らを諦めるつもりですか」

 「お、男女の双子?」

 篠田初の視線は診断書に落ち、複雑な心境がさらに深まった。

 「それに、実はあなたの体質は妊娠に適していません。この子たちを失ったら、次に妊娠するのは難しくなるでしょう。よく考えたほうがいいですよ」

 医師はそう言ってから、マスクを直し、外に向かって「次の方」と呼びかけた。

 看護師が篠田初のところに歩み寄り、事務的な口調で言った。「手術をすることを決めたなら、こちらに来て服を着替えてください」

 しばらくして、手術室の赤いランプが点灯し続けていた。

 篠田初は手術服を着て、無表情で手術台の上に横たわっていた。

 ———

 夜は冷たかった。

 篠田初は病院から帰宅した後、再び昨日白川悦子と一緒に串焼きを楽しんだ屋台に向かった。

 心の中は落ち着かず、酔いたくて酒を飲もうとしたが、口をついて出たのは結局「店主さん、豆乳を一本、そしてカボチャ粥をお願いします」という言葉だった。

 結局、彼女は子供たちを堕ろすことができなかった。

 元々、一つの命を背負うことでも十分に重い責任だったのに、今は二つの命を抱えていた。どうしてもその決断ができなかったのだった。

 だから、手術器具が彼女の体内に入る前に、彼女はふらふらと手術台から飛び降り、その場から逃げ出したのだった!

 「あなたたち二人のバカったれ、天上でパパとママを選ぶとき、何か間違えたんじゃないの?」

 「この一杯は、父親のいない人生に乾杯するよ!」

 篠田初は子供たちを密かに産むことを決意した。

 彼女自身は苦しみを恐れていなかったが、二人の子供たちを思うと心が痛んだ。

 豆乳を酒代わりに、一気に飲み干した。

 その時、どこからともなく現れた数人の男たちが、殺気立った様子で篠田初に近づいてきた。

 「金田さん、見てください。こいつが昨日、木戸さんを殺しかけた女です!」

 篠田初は冷静に一瞥をくれ、話している男が昨夜の子分の一人であることに気づいた。

 明らかに、この連中は復讐に来たのだった。

 「こいつか?」

 全身筋肉の金田広貴は、このあたりでは有名な悪党だった。

 彼は信じられなかった。彼の有能な部下である木戸三郎をICUに送り込んだのが、こんなにか弱そうな女だとは?

 「私だ」

 篠田初はグラスを置き、彼女を取り囲んだ男たちを見上げて冷たく言った。「あなたたち、邪魔だわ。さっさと消えないと、あの下劣な男よりもひどい目に遭うことになるわよ!」

 「おいおい、この小娘、大きくもないくせに、随分と大口を叩くじゃねぇか?」

 金田広貴は横肉の浮いた顔を震わせ、凶悪な目つきを見せて篠田初の襟元を掴んだ。「今日こそお前に、ルールってもんを教えてやるよ。どういう作法が必要かもな教えてやる!」

 「そうなの?」

 篠田初は眉をひそめ、心の中で「まあ、ちょうどいい。タダでストレス発散させてもらえるなんて、神様も親切ね」と思いながら、指を組み合わせて骨を鳴らし、準備を整えた。

 しかし次の瞬間、金田広貴の悲鳴が響き渡り、彼の体がまるで抛物線を描くように空中に投げ飛ばされた。

 高い壁のようにそびえ立つ大きな影が、篠田初をしっかりと守るように立ちはだかった。

 「さっき、彼女に手を出したやつは、大人しく前に出ろ」

 松山昌平の低く冷たい声には、人々を震え上がらせるような寒気が漂っていた。

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